街に新しい地平線を建築化する
―アクロス福岡の国際設計競技―
プロダクトから都市建築までオールラウンド建築家
川口 英俊
©Emilio Ambasz & Associates Inc.
ニューヨークの事務所では、夜にスケッチを日本の建設会社に送ると、明くる日の朝には日本からの回答が事務所に届いているという、日本とニューヨークの12時間の時差を有効に使った24時間眠らないプロジェクトでした。そこには欧米の思考と、守らねばならない日本の法的な事情の間に大きなギャップもあり、初期段階のピュアなデザインとの乖離がいつも付きまとったものです。 1990年7月にこの案は見事に1位を獲得し、5年を経過した1995年3月に、地下4階、地上14階の建築は竣工し、アクロス福岡と命名されました。公園と近代的な建築物の大胆な組み合わせによるアクロス福岡は、日常認識しているビルの形式とは異なる考え方をして、同時に敷地の有効利用という都市が抱える共通の課題に対して解決策を示した都市建築なのです。
公園の地平線が連続して建築物と一体となる、このようにデザインアクセスの方向によっては、都市建築とは大変有意義な空間に変わる面白さがあるのです。
略歴
武蔵工業大学工学部建築学科卒業、早稲田大学大学院修了、イェール大学建築学部大学院修了。M.A.(Master of Architecture)建築修士。
Emilio Ambasz & Associates ニューヨーク事務所勤務(プロジェクトデザイナー・マネージャー)。現在、(株)アーキテクト・キューブ 一級建築士事務所 代表取締役(www.a-3.co.jp)一級建築士。
国内外で建築家として建築設計や空間提案を中心にCFPや不動産鑑定士などとプロジェクトチームによる企業再生に関わる他、プロダクトデザイナーとして商品開発のプロジェクトを実行している。
作品:アクロス福岡(基本計画)、マイカル三田ポロロッカ(旧山西福祉記念会館)、The Phoenix Museum of History、Convent of The Holy Infant Jesus 等を担当;(EAA事務所)、大原山七福天寺(カナダグリーンデザイン賞受賞)、その他、住宅、集合住宅、事務所、医療建築等多数の建築設計や、椅子のデザイン、世界初の伝統工芸品を応用した「江戸くみひもペン」kulisのデザイン商品開発。外濠(市ヶ谷~飯田橋)地区再生プロジェクト(進行中) ほか。
作品集:『現代建築集成/宗教施設』 (共著、プロトギャラクシー/メイセイ出版、 『現代日本の家具Vol.1』 (共著、ART BOX INTERNATIONAL INC.) ほか。
論文:「Tradition and modernity in structural art of steel-glass constructions in Japan」 (Steel Construction: Design and Research) ほか。
担当科目
都市デザイン、Urban Landscape、空間デザイン演習(2)(3)(4)ほか