強みをどのように発見するかで
ブランディングは決まる

マーケティング・広報・PRにおける理論と実務の実践者

北見 幸一

筆者は、都市生活学部に異動する前に、民間企業でマーケティング・PRコミュニケーションの実務をこなし、その前には、北海道大学の准教授として、コミュニケーションの研究を行っていた。本稿では、北海道大学時代のブランディング戦略に携わった話をちょっとだけ紹介したい。「北海道米」のブランド戦略である。
今でこそ、「ゆめぴりか」ブランドの確立に成功して、北海道米の存在が知れ渡るようになったが、私が北海道大学に在籍した2007年ぐらいの時期は、まだ「ゆめぴりか」も発売前であったため、北海道米は知られる存在ではなかった。しかし、北海道は新潟県と並ぶ米どころである。にもかかわらず、道内でも「コシヒカリ」「あきたこまち」などのブランド米が多く食されていた。近年、品種改良等の成果もあり、北海道米がおいしくなってきていたのは事実であるが、なかなか北海道米ブランドを確立できずにいた。
北海道米のおいしさや良さを、どのように伝えるか苦労していたのであった。そこで、まずはブランド米のブランド構造を把握すべく調査を行った。一般消費者に対して、米のブランド銘柄を提示しない銘柄非提示(ブラインド)での食味調査と、米のブランド銘柄を提示する銘柄提示(ブランデッド)での食味調査という2つの調査を行い、おいしさの比較を行ったのである。
調査結果からいうと、銘柄非提示調査の場合、北海道米には一定の高い評価があった。特に10代から30代にかけては「おいしい」との評価が高かった。しかし、銘柄提示調査の場合、ブランド銘柄を提示することで米の食味評価に影響を与えた。特に、既にブランドが確立されているブランド米であればあるほど、ブランド銘柄の提示により25ポイント以上も味の評価が向上したのである。米自体はまったく変化がないのにも関わらず、ブランドが消費者の食味を変えてしまったのだ。それだけ、ブランドは重要なものであると思い知らされた。実は我々はブランドを食べて満足しているのかもしれない。
しかし、銘柄提示調査では、北海道米は他府県のブランド米に負けてしまったが、逆に、銘柄非提示調査の場合、北海道米がかなり評価を得ていたことが事実(ファクト)として判明したのである。この事実を逆手に取り、北海道米のおいしさをデータにして見える化し、消費者に提示することで、「おいしくなった」事実を訴求するようになった。「ゆめぴりか」の発売タイミングとちょうど重なったが、「北海道米」のブランディングは大成功を収めている。今では首都圏でも、他府県のブランド米と比較して、最近ではむしろ北海道米の方が、値段が高くなっており、ブランド米としての評価を得ている。
「おいしさ」は、実は北海道米の強みであった。「おいしさ」というのは、人により感覚が異なるので、表現しにくく、それを伝えることは難しい。その強みを今回はデータという形で表現できたのである。ブランドの構築はイメージ訴求だけでは難しい。「強み」を表現する事実やファクトを伴ってこそブランディングは成功する。「強み」をどのように発見するかでブランディングは決まるのである。

略歴

博士(経営学)。MBA(経営学修士)。北海道大准教授、株式会社電通パブリックリレーションズ部長を経て、2017年4月より現職。専門は経営学、マーケティング、ブランド戦略、広報戦略。広報・PRを中心に、マーケティングやコーポレートコミュニケーション実務とアカデミズムの架け橋として実践。社会情報大学院大学・客員教授も兼務。著書に『広報・PR論-パブリックリレーションズの理論と実際』(共著、有斐閣、2014)など多数。日本広報学会「優秀研究奨励賞」(2010)、日本広報学会「教育・実践貢献賞」(2015)、日本PR協会「PRアワードグランプリ」部門最優秀賞(2014, 2015)。

著書:伊吹勇亮、川北眞紀子、北見幸一、関谷直也、薗部靖史『広報・PR論-パブリックリレーションズの理論と実際』、有斐閣、2014年10月(共著)
北見幸一『企業社会関係資本と市場評価-不祥事企業分析アプローチ-』、学文社、2010年2月(単著)
社会情報大学院大学編『デジタルで変わる 広報コミュニケーション基礎』、宣伝会議、2017年1月(共著)

担当科目

「マーケティング概論」「ブランド戦略」「プレゼンテーション」ほか

ページトップへ戻る